1-4. 大腸菌
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1) 特徴
大腸に生息する0.5×4μmほどの桿菌(棒状の細菌)で、約466万塩基対の環状DNAをゲノムにもち、遺伝子はおよそ4,300個 研究に使われる大腸菌はK12株とよばれる系統だが、その他B株などもわずかに使用される 遺伝子工学の中心的な生物である大腸菌のなかの標準的な菌株
条件がよいと約15分に1回という、非常に速い速度で分裂・増殖する
このことが迅速な遺伝子組換え実験を可能にしている理由の一つ
2) 遺伝子型
DNA組換え実験で大腸菌を使用する場合、目的に適した菌株の大腸菌を使用する必要がある DNAの増えやすさ
DNAの導入のしやすさ
入れた後の増幅性や安定性
DNAのもつ遺伝子の検出のしやすさ
つくられるタンパク質の安定性など
実際に使用する場合、以下の遺伝子型が特に重要
「::」と表示される
トランスポゾンで運ばれる薬剤耐性遺伝子を持つ
特定の栄養素が合成できず増殖させる場合、それを加えなくてはならない
細菌を殺す抗生物質Xを無毒化する酵素遺伝子を持つ
Xを加えて培養することができる
雄菌の性質を示すF因子($ \mathrm F^+)をもつか、それがゲノムに組み込まれたもの(Hfr)をもつ 野生型($ recA^+)は組換えが高頻度に起こるため、大腸菌に組換え操作を施したばかりのDNAを導入する場合は、recA機能を欠いた$ recA^-菌を使う
3) 培養
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オートクレーブ前に寒天を加えると、冷えた後で固まるので、固形培地として使うことができる https://gyazo.com/ddfeb9c771af6056527396750576e8bc
大腸菌を液体培地に接種(植菌)し、培養を開始すると(酸素を取り込ませるため、撹拌する)、誘導期を経て、細胞が約15分ごとに1回分裂する対数増殖期に入り、急速に増え始める 半日も経つと、栄養素の枯渇や物理的制約、代謝産物や老廃物の蓄積によって増殖速度が低下し、それ以上増えなくなる(定常期) その後、死細胞が増え、生菌数が減少し(死滅期)、やがてほとんどが死滅する プレートを使った培養
白金耳(菌を塗るために先端が輪になった金属製の器具)で大腸菌をプレートに塗ると、一晩の培養で1個の細菌が目で見える集団(コロニー)にまで成長する https://gyazo.com/4efc371d7ffa23fafdadb32fc9bfc794
多数の細菌でも適当に希釈して接種するとコロニーが独立して出現するので、結果的に細菌1個1個を独立(純粋)に扱える純粋培養ができる
4) 滅菌
生命体、さらにはゲノムやウイルスなど、それらすべてを死滅・無力化させる操作
滅菌された状態
細菌やウイルスの操作、組織培養は無菌操作を基本とする 遺伝子工学では主に以下の4つの滅菌法が用いられる
121℃の水蒸気(2気圧の水蒸気)による15分間の加熱を、専用の機械(機械もオートクレーブという)を使って行う
主に水分を含むものに使われる
水分のないもので、耐熱性のもの(e.g. 金属製、ガラス製、耐熱性プラスチック製)をオーブンを使って180℃、30分間加熱する
白金耳など、細菌を扱う器具で行われる
ガスバーナーなどの火炎中で赤熱するだけの操作
ピンセットやガラス器具の一部分を滅菌する目的でも行われる
熱不安定な液体試料や有機溶剤などを、穴サイズ0.2μmのフィルターに通す
生物はのぞけるが、ウイルスや核酸は通過する
紫外線はDNAを損傷させ、殺菌剤はタンパク質を編成させる
殺菌のうち、病原性のものを殺す場合、あるいは感染性を失わせる場合